AIと連携して業務を自動化する方法:非エンジニア向け実践ガイド
はじめに:AIによる業務自動化の可能性
今日のビジネス環境では、AIの進化が目覚ましいスピードで進んでいます。特に、定型的で時間のかかる業務において、AIを活用した自動化は大きな生産性向上をもたらす可能性を秘めています。多くの非エンジニアのビジネスパーソンが、生成AIなどのツールを個別に利用して効率を上げている一方で、「複数のツールを連携させて、もっとシームレスに業務を自動化できないか」と考えているのではないでしょうか。
本記事では、技術的なバックグラウンドがない方でも理解できるよう、AIツール連携による業務自動化の基本から、具体的な方法、そして実践のためのステップをご紹介します。未来対応力を高め、変化の激しい時代でも自身の強みを活かしていくための一歩として、ぜひ参考にしてください。
なぜAIツール連携による自動化が必要なのか
AIツールは単独でも強力ですが、複数のツールを連携させることで、その真価を発揮します。例えば、
- メールの受信内容に応じて、関連情報をAIに要約させ、特定の担当者に通知する
- オンライン会議の議事録をAIが自動作成・要約し、関連タスクをプロジェクト管理ツールに自動登録する
- 特定のウェブサイトの情報収集をAIに指示し、その結果をスプレッドシートに自動で記録する
このように、複数のステップからなる一連の業務プロセスを自動化することで、手作業による時間や労力を大幅に削減し、より創造的で付加価値の高い業務に集中することが可能になります。
非エンジニアのための業務自動化ツール
AIツールを連携させて自動化を実現するために、専門的なプログラミングスキルは必須ではありません。近年では、様々なツールやサービスを簡単に連携できる「ノーコード・ローコードツール」が普及しています。これらのツールを使えば、視覚的な操作や簡単な設定だけで自動化ワークフローを構築できます。
代表的なノーコード・ローコードの自動化ツールとしては、以下のようなものが挙げられます。
- Zapier(ザピアー): 数千種類のアプリやサービスに対応しており、「Trigger(特定の出来事)が発生したら、Action(別のツールで実行する動作)」というシンプルな構造で自動化を設定できます。
- IFTTT(イフト): 「If This Then That(もしこれなら、あれをする)」という分かりやすいコンセプトで、家電やウェブサービスなど、幅広いものを連携できます。個人的な用途からビジネスまで幅広く利用されています。
- Make(旧Integromat)(メイク): Zapierと同様に多くのサービスに対応していますが、より複雑なワークフローや条件分岐を設定しやすいのが特徴です。
これらのツールは、Google Workspace(Gmail, Drive, Sheetsなど)、Slack、Zoom、各種CRM(顧客管理システム)やプロジェクト管理ツールなど、日常的に利用しているビジネスツールとAIサービス(ChatGPTなどのAPI)を連携させるハブとなります。
専門用語として「API(Application Programming Interface)」や「Webhook(ウェブフック)」といった言葉を耳にすることがあるかもしれません。これらは、異なるソフトウェア同士が互いに情報をやり取りするための「窓口」や「合図」のようなものだと理解しておけば十分です。ノーコードツールは、これらの技術的な仕組みを意識することなく、連携を可能にしてくれます。
具体的な自動化事例(非エンジニア向け)
非エンジニアのビジネスパーソンが、AIと連携して具体的にどのような業務を自動化できるのか、いくつかの事例をご紹介します。
事例1:メール受信内容の自動処理
- 課題: 特定の顧客や件名を含むメールが来た際、内容を確認して手動でタスクを登録したり、情報を共有したりする手間がかかる。
- 自動化ワークフローの例:
- トリガー: 特定の差出人または件名を含むメールがGmailに届く。
- アクション1: メール本文をAI(例: ChatGPT API)に渡し、要約やキーワード抽出を依頼する。
- アクション2: AIからの応答(要約など)を受け取り、Slackの特定のチャンネルに自動で通知する。
- アクション3: Google Sheetsにメールの件名、差出人、AIによる要約などを自動で記録する。
- 効果: 重要なメールの見落としを防ぎ、情報共有や記録の手間を削減できます。
事例2:オンライン会議後の自動タスク登録
- 課題: オンライン会議の議事録作成や、会議中に決まったタスクの管理が煩雑。
- 自動化ワークフローの例:
- トリガー: Zoomなどの会議ツールで会議が終了する。
- アクション1: 録画やトランスクリプト(文字起こし)をAI音声認識サービスまたはAI(例: OpenAI's Whisper API)に渡す。
- アクション2: AIが生成した議事録や要約を受け取る。
- アクション3: AIに議事録からタスク項目と担当者を洗い出すよう指示する。
- アクション4: AIが洗い出したタスクをTrelloやAsanaなどのプロジェクト管理ツールに自動で登録する。
- 効果: 議事録作成やタスク管理の時間を短縮し、会議で決定した内容に基づいたアクションを迅速に開始できます。
事例3:社内外の情報収集と要約
- 課題: 定期的に特定のウェブサイトやニュースソースから情報を収集し、内容を把握する必要があるが、時間がかかる。
- 自動化ワークフローの例:
- トリガー: 毎日決まった時刻になる。
- アクション1: 指定したウェブサイトやRSSフィードから情報を取得する。
- アクション2: 取得したテキスト情報をAI(例: Claude APIなど)に渡し、関心のあるトピックに絞って要約を依頼する。
- アクション3: AIによる要約をまとめたレポートを、指定したメールアドレスに送信したり、社内wikiに自動で投稿したりする。
- 効果: 最新情報のキャッチアップが効率化され、情報収集にかかる工数を削減できます。
これらの事例はあくまで一例です。ご自身の担当業務の中で、繰り返し行っている定型的な作業や、複数のツール間での手動での情報連携が必要な作業がないか、見直してみることから始めてみましょう。
自動化を始めるための実践ステップ
AIツール連携による自動化は、いきなり大きなシステムを構築する必要はありません。小さく始めて、徐々に拡張していくのが現実的です。
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自動化したい業務の特定:
- 最も時間のかかっている定型業務は何か。
- ヒューマンエラーが起こりやすい作業は何か。
- 複数のツール間で手動でのデータ移動やコピー&ペーストが必要な作業は何か。 まずは一つ、具体的な業務プロセスを特定します。
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利用可能なツールの確認:
- 現在業務で使用しているツール(メール、カレンダー、ストレージ、チャットツール、プロジェクト管理など)は、ノーコード自動化ツールと連携可能か確認します。
- AIサービス(ChatGPTなど)が、連携可能なAPIを提供しているか確認します。多くのノーコードツールは、主要なAIサービスのAPIとの連携モジュールを持っています。
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ノーコード自動化ツールの選定と習得:
- Zapier, IFTTT, Makeなどのツールの中から、連携したいアプリへの対応状況や料金プラン、使いやすさなどを比較検討し、一つ選びます。
- 選んだツールの基本的な使い方(トリガーとアクションの設定方法など)を学習します。多くのツールは無料トライアルやチュートリアルを提供しています。
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最初のワークフロー構築とテスト:
- 特定した業務プロセスに基づき、最もシンプルな自動化ワークフロー(ZapやScenarioなど、ツールによって呼び方は異なります)を構築してみます。
- 実際に動作させてみて、期待通りに情報が流れるか、AIの処理は適切かなどをテストします。
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効果測定と改善:
- 自動化によって、実際にどれくらいの時間や手間が削減できたか測定します。
- 不具合があれば修正し、さらに効率化できる点がないか検討します。
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他の業務への応用・拡張:
- 一つの自動化が成功したら、その経験を活かして他の業務プロセスへの応用を検討します。
- より複雑なワークフローや、条件分岐が必要な自動化にも挑戦してみましょう。
このプロセスを繰り返すことで、自動化のスキルと知見を着実に蓄積していくことができます。
まとめ:AIツール連携スキルが未来を切り拓く
AIツール連携による業務自動化のスキルは、単なる時短テクニックに留まりません。これは、現代のビジネスパーソンにとって非常に重要な「未来対応力」の一つです。
AIを単に利用するだけでなく、AIを含む様々なツールを連携させて自身の業務プロセスを設計し、効率化していく能力は、変化が速く、新しい技術が次々と登場する時代において、自身の価値を高め、キャリアの可能性を広げる力となります。
本記事でご紹介したノーコード自動化ツールや具体的な事例が、皆さんがAIと共存し、自身の強みをさらに伸ばしていくための一助となれば幸いです。まずは小さな一歩から、業務自動化の世界に足を踏み入れてみてください。